軍師ピックアップ 
河合税理士事務所 所長 / 株式会社プラス・パートナー 代表取締役
河合 由紀子【一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級】

過去、現在、未来をつなぐ伴走者

過去の数字を教えてもらっても、将来の何の役にも立たないよ」

渡した資料には目もくれず、業績の伸びない理由を従業員の出来が悪いからという一言で片づけるクライアント。河合は耳を疑った・・・が、事実、目の前のクライアントはそう断言した。彼女が税理士になって間もない頃の話である。

河合は間違いのないように正確に業績を表す資料を作成し、その場に臨んでいた。しかし、そのクライアントは表紙さえ開こうとしなかった。目の前の社長は、自社の従業員の悪口を言うばかりで何の解決策も持っていない。この会社はこれからどうなってしまうのだろうか・・・。心配は募る。

そのとき、彼女の胸中には1つの疑念が芽生えた。自らの「税理士としての仕事」への疑念だ。確かにステークホルダーのために正確な決算書を作成することに価値はあるかもしれない。しかし、それは目の前のクライアントが継続的に成長発展するために役立っているのだろうか?

その答えは「No」であった。ここから仕事に対する考え方が180度変わった。

事業と人の継続的な発展と成長に貢献したい

2001年6月、河合は2年間の税理士事務所での修行を終え、税理士資格を取得し意気揚々と祖父の経営する税理士事務所に入所した。その当時、彼女は正確かつ迅速に税務会計の処理をすることが最も大切な仕事だと考えていたという。しかし、クライアントが本当に必要としているモノは違っていた。立て続けにクライアントの大口取引先の倒産による連鎖倒産、売上の低迷に手を打てなかったことによる任意整理などが発生した。その手続きを行う中、彼女は自身の役割や仕事の意味を考え直し、本当に役に立つサービスの在り方、役に立つことのできる自分への模索を開始した。

2008年以降、河合の動きは加速する。まずは、本格的に中小企業の経営をサポートするため、経営計画の策定とPDCAサイクルを回すお手伝いを商品ラインナップに加えた。しかし、計画をつくることはできるのだが、いざ実行段階になると多くのクライアントではさまざまな壁を前に頓挫し、計画が絵に描いた餅となってしまう。

その解決に寄与できる自分を確立するため、河合は2009年より社会人大学院に進学し、経営学を2年間学び、MBA(経営学修士)の資格を取得した。しかし、ビジネススクールで学んだフレームワークや考え方の多くは大企業の論理で構成されているため、そのままでは中小企業に当てはめることが難しい。そのことを実感しつつも、河合は自分の力を磨き続けた。

その最中、2009年6月に税理士事務所の創業者でありトップであった河合の祖父が他界した。89歳だった。親族としての悲しみはあったが、年齢的なこともあり祖父は数年前に一線を退いていたことから、実務上大きな問題が起こるとは思えなかった。そして、当然自分が事務所の後を引き継ぎ、これまで通りうまく運営していけるはず。既にクライアントもある。一定の収入もある。従業員もいる。間違いのないように舵取りさえすれば、何の問題もなく動いていくだろう・・・と河合は考えていた。

しかし、現実はそんなに甘くない。高度経済成長期のように作れば売れる時代ではない。一生懸命寝る間も惜しんで仕事さえすれば利益が出る時代でもない。まして、事業を引き継いだのはリーマンショック直後だ。クライアントの中には急激に業績が悪化するところもあった。加えて、税理士業界における競争が激化した。規制緩和により報酬規程が自由化され、インターネットの浸透により会計事務所のサービス価格は多くの人が知るところとなり、(他の業界に比べれば緩やかながらも)業界内での価格競争も始まった。将来的には従来の業務を提供するのみでは生き残っていけないだろう。河合はその現実と向き合うことになった。

そんな中、河合は「本当に実現したい仕事」への想いを強めていった。それは、クライアントの『事業と人の継続的な発展と成長』に貢献したいということに尽きる。その実現に向け、河合は動き出した。2009年、新たにPDCAをサポートする事業を立ち上げ、20代の若手社員を2名雇用することを決めたのだ。

理想と現実の中でもがき、本質に気づいた

しかし、そんな河合に大きな壁が立ち塞がった。長年従来型の税務・会計のみを事業の中心としてきた社員の協力が得られない。そして、当然の結果として、なかなか新規事業を軌道に乗せることができないまま時間が経過していく。社員は口には出さないものの、「どうせ上手くいくわけがない」と思っている。新規業務に手をつけようとしないのだ。そんな社員たちを説得する日々が続いた。実は、河合の新しい試みに対して、特に強く反対したのは・・・他でもない、勤務歴のもっとも長い創業者の長女、河合の母だった。

河合は、社員を採用するにあたり、彼らに新規事業についての想いを熱く語った。しかし、事業を引き継いだばかりの河合自身は、クライアント訪問や、自らの実務に追われるばかり。せっかく採用した若手社員に業務を教える時間がない。結果として、新規業務のために採用した社員も、従来の税理士事務所の主軸業務である会計処理や税務申告書の作成がメインの仕事となる。中小企業のお役に立ちたいと期待に胸ふくらませて入社した社員は、その現実と理想のギャップから次々と退職していった。採用しては退職するという状態が続いていた。

そんなとき、河合に1つの転機が訪れた。軍師アカデミーとの出会いだ。

「後継者の軍師にならないか?一緒にやろうよ」

そのメッセージに共感し、再び河合は動き出した。実際、事業承継期を迎えたクライアントが増えてきており、社長から「息子が頼りなくて…」「そろそろ事業承継を考えないといけないんだけれど、どうしたものか…」という相談を受けることが増えていた。自分もその良きアドバイザーになりたいという想いで受講を決めた。

ところが、受講してみると自身を振り返る事が多いことに驚く。毎回、グサグサと自分自身の胸に突き刺さるものがある。そして、自身の間違いに気づいた。

「私は・・・相手の立場に立って物事を考えられていなかった」

いきなり「このままでは駄目だ」と言われ、素直に従う人はいない。こちらの意図はどうあれ、それが当たり前だ。ましてや創業当時から創業者とともに歩んできた母が、娘に駄目だと言われ、喜んで受け入れるはずがない。社員もそうだ。これまでの数年間、社員たちはどんな気持ちで過ごしてきたのだろう。退職していった若手社員たちはどんな思いだったのだろう。そう考えると恥ずかしく、申し訳ない気持ちが溢れ出してきた。

「自分が一番変わらなければならない人間だった」

河合はそのことに気づいた。そして、これまで十分に時間を割いてこなかったコミュニケーションを大切にするようになった。今では、親族そして社員との会話、情報交換、意見交換を日常的に重視している。月に2回の会議では、単なる報告会にならないよう、コミュニケーションを大切に、毎回工夫しながら運営するようになった。

かつて対立構造に陥り、協力を得られなかった職場の空気はもうない。改革に反対していた母や古くからのスタッフも、今では前向きに事務の効率化を考え、積極的に動いてくれる。新しい情報を持ち込めば、どのようにしたら我が社に取り入れることができるかという議論が繰り広げられる。職場の仲間とともに未来に向かうことができる幸せ。その大切さに河合自身が気づかされている。

軍師力を吸収し、その力を開花させた

「クライアントの経営サポートをするには信頼を得ることが第一。でも若いうちはなかなか信頼を得ることができないから、資格を取るというのも信頼を得る一つの手段になると思うよ」

ある会計人の集まりの場で、同行していたスタッフに河合が投げかけた言葉だ。彼は、河合自身が採用したスタッフで、今ではクライアントのPDCAサイクルを回すサポートを一人で担うことができるまでになった。その彼の更なる成長を願い、志高き人々の空気に満ちた場において、河合は彼の背中を軽く押してみたのだ。

現在、彼は中小企業診断士を目指し、勉強している。河合が始めた事務所改革の意味を理解し、先輩と対立することもなく、自らの役割を果たしてくれている。そして、自らクライアントのために成長しようとしている。その姿は河合の目にも頼もしく映っている。

これまでの失敗も成功も、全ては未来のためのものだった。空回りした時期を経て、そんな経験を踏まえた河合だからこそ実行できることがある。河合は、さまざまな経験から多くのことに気づき、さらに軍師視点でその経験・知識・知恵を磨き上げ、自らの力を開花させつつある。

ディフェンス・オフェンスの両輪を強化し、クライアントに伴走する

河合は、過去~現在、そして未来をつなぐ軍師として、その事業スタイルを確立しつつある。

まず、従来の税務会計業務については、徹底的に正確に、効率的に遂行することこそが税務事務所の中核機能としてとらえ、仕事の仕組みを再構築中だ。

さらに、「未来を創るお手伝い」を中核業務とする株式会社プラス・パートナーを2014年5月に新設。そこではPDCAを回すための会議支援や経営計画策定支援、リスクマネジメント、そして事業承継支援を担っている。

税理士事務所の業務がディフェンスを担当し、プラス・パートナー社がオフェンスを担当し、その両輪が力強く粘り強く回り続け、グループ全体でクライアントの伴走者となる。河合たちが目指すのは、クライアントの過去(発生したことに対する税務・会計)と未来(将来の価値を高め、未来を引き寄せるためのコンサルティング)をつなぎ合わせ、クライアントに貢献することだ。クライアントの過去に光を当てながらも常に未来を視野にいれ、また、未来への支援においても過去の事実に根差し、リアルな分析からの道筋を描くことができる。今では、その2つの機能がグループとして連携している。

さらに、軍師アカデミーを通じて獲得した「後継者支援の力」も事業に吸収し、新しい展開を見せている。例えば、2014年からは軍師アカデミーの仲間たちが設立した株式会社後継者の学校と連携し、独自の後継者の成長支援プログラムを提供する「後継者の学校」大阪校をスタートさせた。そこでは、受講を終えた後継者同士がともに学び、ともに成長するための繋がりが生まれ、新たな可能性を見せている。今後は、受講時期を問わない卒業生の繋がり、その広がりをサポートしていく予定だ。

過去~現在を正確にとらえ、価値ある未来へと伴走する軍師、河合由紀子。彼女は、これからも数値を軸とした中小企業への支援業務を広げていくとともに、まだまだ発展途上である自分自身の成長を実現するだろう。そして、未来を担う後継者に寄り添いながら支援を続けていくに違いない。

河合 由紀子(かわい ゆきこ)
【一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級】

連絡先
河合税理士事務所
( http://www.tao-k.com

株式会社プラス・パートナー
http://www.plus-partner.co.jp

〒550-0003
大阪市西区京町堀1丁目6番4号
アーバンリサーチビル7階
T e l: 06-6225-0353(代)
Mail: info@plus-partner.co.jp

 

 

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