軍師ピックアップ 
株式会社えんのした 代表取締役
川路 隆志【一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級】

成長力を生み出す回路を職場に埋め込む

クライアントの感情を受け止めつつ、 流されず

「誰が、いつまでに、何をするかを決めていないから何にも動かんのじゃ。もうええから、とにかく、誰が、いつまでに何するか具体的に決めろ!そして、全部について徹底的に報告しろ!そうすれば、全部うまくいくでしょう。ねぇ、先生!?」

部下たちの働きに納得できない部長が会議で放った言葉だ。自分の思うとおりの仕事をしない部下たちに業を煮やし、部長がノルマ強化と徹底による締め付けを行おうとした瞬間だった。そして、外部コンサルタントとしてその場に参加している川路にも合意を求めてきたのだ。いや、合意を求めたというよりは、川路に「手ぬるい!もっと厳しく締め付けないと、この連中は何もしないよ」と伝えたかったのかもしれない。
シンとする会議室。プロと言えども人間、コンサルタントと言えども、あまり味わいたくない空気がその場にのしかかってきた。気弱なコンサルタント、あるいはその場しのぎでクライアントのご機嫌取りに終始する程度のコンサルタントであれば、「おっしゃる通りです」と口走りそうな場であることは間違いない。しかし、川路は動じなかった。むしろ、その部長の発言を聞いた部下たちの表情の変化を見逃さなかった。心配そうな表情、諦めの表情、無関心の表情・・・ここで流れを変えてしまうと、このチームは立ち直れない!川路はそう確信した。

「確かに何をしていくべきかを議論して、設定することは大切ですね。そして、それが実現できてナンボの世界ですし、そのためにはチーム力を使う必要があります。何をすすべきかを定めると同時に、その課題や目標をチームで実現するために、ここにいらっしゃる方々がお互いにどんな役割を果たすことができるのかを皆で見える化してみましょうか」
その川路の言葉を受けて、部長も職場のメンバー達も一瞬戸惑った。今の返事は、要するにYESと言ったのか?NOと言ったのか???その場に生まれる一瞬の“間”。そして、その“間”をつく形で、川路からの支援の一手が撃ち込まれた。

人と仕事を育てる“職場”を創りこむ

中小企業診断士、経営学修士(MBA)、MBTI認定ユーザー…専門家として数々の顔を持つ男、川路隆志。本拠地の岡山ではメディアにも登場する、今、もっとも勢いのあるコンサルタントの一人である。経営コンサルタントを職として10年超、さまざまなテーマを扱ってきた川路だが、決して「何でも屋」ではない。彼には、全ての仕事を貫く信念がある。

その信念とは・・・人の成長を通じて企業を成長させ、かかわる多くの人々を幸せにすること。川路はそのことに徹底的にこだわり、そのための腕を磨き続けている。
「企業は、お客さんも従業員も経営者も、そこにかかわる人々が幸せになってナンボ。そのために利益も出さないといけないし、倒産しないように万全を期さないといけない。専門家としての私の技術は、そのために役立てていただくために磨いている」

「技術を使うために企業や人が存在しているわけではない。だから、私の技術はその場で役立てるためになら、いつでもスクラップ&ビルドする。それができない技術など実践では何の役にもたたない」
川路は、そんな言葉を気負うことなく、当たり前のように口にする。しかし、自然体で、リラックスした柔和な表情で語られる言葉の全てには力強い信念が感じられた。

そんな川路が徹底的に磨き上げてきた技術がMBOだ。MBOとは、「Management by Objectives and Self- control」の略で、直訳すると「目標とセルフコントロールによるマネジメント」となる。経営学の巨人と呼ばれるドラッカーが提唱した考え方に基づく手法だ。一般的には「目標管理制度」と訳されることも多い。

軍師アカデミー2010卒業生(第1期生)である川路は、軍師アカデミー終了後、後継者軍師会内に「MBO経営研究会」を立ち上げ、リーダーとして軍師手法としてのMBOの研究と実践を続けてきた。
軍師アカデミーでは、後継者と後継者経営の双方の成長の連鎖を実現し、動かすための視点と手法を学ぶ。ただし、第1期の時点でカリキュラムに明確に組み込まれていなかった点が1つ存在した。それが「経営のプラットフォーム」づくりという視点であり、その最後のパーツを埋めるものがMBO手法だった。後継者の軍師の代表、神崎もそのことはアカデミー開始時点で認識しており、そのパーツを埋めていく流れをつくるという役割も「MBO経営研究会」は担っていた。そして、今では軍師アカデミー内でもMBOの考え方が吸収されている。その背景に、川路率いるMBO経営研究会の活動があったことは言うまでもない。

 

チームとしてまわり始めた職場

先の「シンとなっている会議室」で川路が繰り出した一手は「役割の見える化」だった。MBOの専門用語としては「役割マトリックス」と呼ばれる図式を使い、個々の課題解決に対してメンバー達がどのようにかかわり合うのかを見える化してしまう仕掛けだ。

大きな付箋カードを用いて、それぞれに果たしうる役割を模造紙の中に貼りつけていく。時々全体を俯瞰し、お互いにその動きで流れがつながるのかを確認する。まさにチームがチームとして機能するために、自分たちで歩き始めた瞬間だった。

そして、ミーティングの中で自ら設定し、メンバーで共有し、納得した「絵」をかきあげたあとは、その絵を見ながら進捗確認のミーティングを積み重ねていく。描いたものに対して検証し、必要ならば、絵を描き直しながら、皆で、チームとしてゴールを目指す関係がそこから生まれていくのだ。
その流れをずっと見守っていた社長は言う。

「これまでは力のある奴が前に進み、他の奴らは後ろであたふたしているだけ。お世辞にもチームとは言えなかったが、最近変わってきたよ。うちの規模の会社だと、個の力の大きさには限界があるけれども、それぞれが持ち味を活かしてチームづくりをしていけば、十分戦えるじゃないか」
そして、チームで戦うメンバーも率直に今を語る。

「いろんな問題がある中で、課題に対して自分の果たすべき役割が見えるようになった。おかげでストレスが減りました。無駄な動きも確実に減りましたよ。無駄なことに追われていたら、本当にやるべきことができない悪循環ですが、今はそういう状態に陥りにくくなりました」
まるで、個人の身体能力や技術の優劣だけでは勝敗が決しないサッカーの試合をイメージするかのようなチームづくりと言えるだろう。余談だが、川路はプライベートでは地元のサッカーチームを熱心に応援し、家族総出で試合会場に訪れることを目撃されることも珍しくない。そうした趣味と仕事スタイルには確かな共通点があると言えるかもしれない。そこに「応援したい」何かがあるのだろう。

短期と中長期の取り組みを両立させる

川路が推進するMBO手法は状況に応じて千変万化する。大切な考え方、押さえどころがあるため、何かの本を読んで形だけマネできるような類のものでは決してないが、重要な勘所を知っているプロであれば、さまざまな場面で応用可能な手法だ。しかも、副作用も少ない。実際、川路は多様な経営課題の解決支援を行っているが、「どんなテーマであっても、最終的にはそれを現実的で有効な形で解決しようと思えば、MBO的な仕掛けを組み込む結果になることが多い」という。ただし、1つだけ注意点があり、川路は支援開始にあたってそのことを依頼者と共有するという。

「MBOは自律的、創造的な仕事の進め方をつくり、組織体質化していく仕組みです。言わば内科治療、あるいは体質改善、体力強化を進めながら課題解決をするようなものです。外科の緊急手術的な打ち手ではありません」

「とにかく、今、この場を乗り切るための資金繰り、売上づくりが必要なのであれば、それは別の打ち手が必要です。その上で、急な外科手術で低下した体力を回復させ、健康な体に戻し、従来以上に強い体に変えていく場面でMBOを組み込みましょう」

川路は自分の得意技に決して溺れない。その向き、不向きを知っている。限界も知っている。だからこそ、駆使することができるのだと語る。実際に支援現場では他の打ち手による緊急手術を組み合わせるケースもあるという。

「とにかく、知恵が欲しい!資金繰りが限界なんです。資金調達するか、即効性のある売上獲得方法とか・・・具体的にアドバイスしてください!」

鬼気迫る形相で川路に助けを求めてきた経営者。川路は瞬時に「短期テーマ」と「中長期テーマ」を交通整理した。そして、「短期テーマ」に許される時間的余裕にアタリをつけた。

「緊急避難としてリストラクチャリングをすぐに実行しましょう。金融機関にも話をしないといけません。猶予はありません。ただし、それで急場を凌いだとしても問題は根本的には解決しません。今後に向けての知恵づくりには、組織全体の力を結集させるしかありません」

川路は、目の前の危機回避とそこからのリカバリーへの組織力の結集の仕掛けづくりを組み合わせて提供したのだ。その後、1年が経過した頃、社長は笑いながら語った。

「自分がこれまで苦しんでいたのは、社内で自分以外の人間がもっている知恵を全部殺していたからなんじゃなぁ。やってみたら、自分では思いつかなかったようなことを現場が言ってきよる。ちょっと悔しいけどな」

この職場にも自律的な成長回路が根付き始めているということだろう。

縁に感謝し、縁を広げ、縁をつなぐ

2012年、川路は「株式会社えんのした」を設立した。約10年前に経営コンサルタントとしての仕事を始めた頃からお世話になっていた地元の老舗コンサルティングファームから独立し、自らの会社を設立したのだ。しかし、独立した今もその頃の縁に恵まれたことに感謝している。その他にも数えきれないほどの縁に恵まれてきたことを実感している。その縁に感謝し、そこからいただいたものを受け止め、価値を加えた形で、その縁に報いていきたいとの思いを自らの社名に込めたそうだ。同時に、人々が頑張る現場を「えんのした」から支え、役割を果たす存在として頑張りたいという思いもそこには込められている。株式会社えんのした代表、川路隆志。えんのしたから人と企業を支え、成長と幸福の実現を促す軍師。更なる飛躍に注目していただきたい。

川路 隆志(かわじ りゅうじ)
【一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級】

株式会社えんのした 代表取締役
中小企業診断士、経営学修士(MBA)、情報処理技術者、
MBTI認定ユーザー
専門は「組織活性化」。大学院修士課程では、「ミドルマネージャーの管理者行動」を研究。現在は事業承継、経営革新の礎となる「組織づくり」や「人づくり」を中心にコンサルティングや研修活動を行っている。参加者の力を存分に引き出し、心のスイッチを入れ、具体的な行動を引き出す支援が持ち味。

株式会社えんのした 代表取締役
〒700-0944 岡山市南区泉田272-6
TEL 086-250-5160 E-mail kawaji@ennoshita.co.jp

 

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