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河上 美夏【一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級】

「おもてなし」の軍師力を現場に

門をくぐる度に肌で感じる変化。現場で働く人々の表情が明るい。

「もうちょっとでした。評価点数4.4、目指してきた4.5に僅かに届きませんでした」

そう悔しがる支配人の表情は、手ごたえを掴んだ人に共通する笑みを含んでいた。

山陰地方の某温泉旅館。長引く不況の中、一時は極めて厳しい経営状況に陥った旅館が復活に向けて歩みだした。経営を引き継いだ後継社長と従業員が一丸となって経営改革を続けた成果が今、実を結びつつある。支配人が口にした「評価点数」とは某口コミサイトでのお客様からの評価点数の平均だ。あくまで指標の1つに過ぎないが、経営サイドと現場が一体となってお客様を「おもてなし」していることへの成績という意味を持つ。
かつては全てが悪循環だった。経営の混乱は現場力を阻害し、現場力の低下はお客様満足を著しく傷つける。悪い口コミは一気に広がり、全てについて負のスパイラルが動き出す。この旅館も、その回路に入っていた。

しかし、数年前、思い切った経営改革が動き出した。経営の担い手も新たな世代へとバトンタッチされ、抜本的な立て直しが始まった。その中で、旅館にとっては中核機能ともいえる「現場のおもてなし力」再生のために呼ばれたのが河上だ。

「おもてなし」でラポール(信頼関係)の糸を現場に張り巡らせる

現場の力を立て直すべく、河上が呼ばれてから1年半。その成果が現場の思考・行動のすべてに現れ始めている。しかし、外部コンサルタントとして旅館を訪問し始めた頃、この仕事の常ではあるものの、現場からの視線は必ずしもウェルカムなものではなかった。

「この人は何者? 敵なの? 味方なの?」

そんな心の声が聞こえてくるような、お互いに距離感をつかみかねる空気が流れる現場。決して敵対しているわけではないものの、人としての信頼関係が育つ前の細い人間関係。乱暴に扱うと一瞬でプツンと切れてしまいそうな「蜘蛛の糸のようなつながり」を河上は丁寧に育てていった。

最初は、現場の声に耳を傾け、その職場で働く人々の現実に心から共感する。もちろん、(時には現場から嫌われる立場になる)社長や現場の管理者に対しても同様だ。そして、彼ら・彼女らとの「ラポール(信頼関係を意味する臨床心理学用語。この構築力は軍師の土台である)」を育て、その関係で結ばれた中で知恵を出し合い、努力し合い、数々の課題に取り組んでいく。「あるべき論」や「絵に描いた餅」を示して終わりではなく、時には悩み、苦しみ、笑う時間も共有しつつ、結果を出し切る軍師として、河上は時間をかけて現場に入っていった。

そのとき、河上が駆使するのが「おもてなし」の力だ。「おもてなし」の精神、行動を対お客様、対仲間において皆が抱き、表現できるようになったとき、現場の全てが好循環で動き出す。

「本当の『おもてなし』は、自分や他人の心と向き合うことから生まれます。だから、『おもてなし』を突き詰めることは、単なるオペレーション改善ではなく、チームとしての土台を強くすることにつながっていくのです」

河上は自信を持ってそう断言する。事実、現場のチーム力は向上し、お客様の評価も上がった。その成果は旅館の経営数字を向上させ、現場の士気、1人ひとりのやりがいに直結した。気がついたとき、現場のスタッフ、経営者、管理者、お客様、そして軍師としての河上、全ての間にラポール(信頼関係)の糸が張り巡らされ、好循環で動き出したのだ。皆で踏ん張り、結果を積み上げてきた1年半を振り返ったとき、あるスタッフがこのように語ってくれた。

「いろいろと変化はありましたが、何より“私自身”がすごく変わりました。以前は自分のことしか見ていなかったけど、今は、どうすればお客様が喜んでくださるだろう?どうすれば最高のおもてなしができるのだろう?と、思考の矢印をお客様に向けています。お客様に喜んでいただけることが、嬉しいのです。」

この意識・感覚が浸透したチームは強い。今では、河上や上司の助言や指示がなくとも「(もっとお客様に信頼してもらえるように)スタッフ同士で勉強会を開きます」という発想・行動が自然と湧き出るまでになった。

個人とチームが動くための基本構造を強くする

実は、河上のコンサルティングでは、単なる個人のスキル向上にとどまらない打ち手も同時に駆使されている。この旅館では、現場に「現場リーダーの明確化と育成」「業務体系の標準化・共有化」の仕掛けがないことに着目し、抜本的な改善策を打ち手の中に組み込んでいたという。

研修によってスキルそのものを向上させ、その効果をメンバーそれぞれが実感する中で自律的な成長回路が動きだすためには、組織全体に何らかの仕掛けが必要だ。その仕組みを組織に組み込んでいくのも、単なるスキルアップを図る研修講師ではない、軍師としての顔を持つ河上だからこそのしたたかさと言えるかもしれない。

現場の変化(成長)が組織全体で受け入れられ、機能するためのツボを見つけ、解決することで、現場の人々の努力が無駄にならない状況をつくりだす。だからこそ、河上のコンサルティングは着実に「成果」を積み上げるのだ。誰に指示されることもなく、現場から「勉強会を開きます」という声が出てくるようになったのも、その大切な成果の1つだろう。

今、この旅館では、(旅館や飲食店には必ずと言ってよいほど設置されている)「お客様からの声」記入シートに「感謝の声」を書いてくれるお客様が目に見えて増えている。その変化が現場の空気を豊かにし、更なる力を生み出すことになる。かつて、お互いに距離感をつかみかねた「河上と現場の間」の微妙な空気は微塵も感じられない。そのあたたかな空気の中、実りのシーズン到来を河上は肌で感じている。

「家庭人」「仕事人」複数のキャリアの虹を重ねる毎日

この「おもてなし」を中核とした、河上の軍師力に期待するのは旅館だけにとどまらない。最近では介護事業に進出した企業などからも支援要請が届き、動き始めているという。着実に活躍の場を広げている河上だが、実は、本格的にプロとして活動を開始したのは約2年前。プロとして生きるようになってからの日はまだ浅いと言えるだろう。

河上のビジネスキャリアのスタートは、大手化粧品メーカーの美容部員。美容部員として好成績を収め、若くして他の部員への指導・研修も担う立場だったという。その後、結婚・出産を機に「家庭人(妻であり、母であり、嫁という、家族での立場でのキャリア)」の歩みに専念する時期があり、「仕事人」としてのキャリアは一時的に中断していたが、9年前に再びビジネスの世界に舞い戻った。子育ても一段落し、徐々に自らのための時間をとる余裕も生まれてきたからだ。

その時の職場は、ある公的な経営支援機関だった。職場では上司や仲間に恵まれ、楽しくやりがいのある毎日だったが、ある時、ひとつのことに気づいたという。彼女は、さまざまな専門家に依頼し、地域の事業者をサポートする仕事を行っていたのだが・・・

「私自身が専門家として支援できるのではないか? いや、それができるようになりたい」

そのことに気づいたとき、かつて化粧品メーカーの美容部員として駆け抜けていた自らのビジネスキャリアが目を覚ましたという。

「研修講師、コンサルタントとして直接事業者を応援したい。自分は何か資格があるわけではないけれども、専門家の種類・人数が決して多いとは言えない山陰で私ができることがあるのでは?」

その意識が高まった時、必然であるかのように出会ったのが「軍師アカデミー」だった。そして、鳥取から遠い大阪会場まで毎月通いつめ、貪欲に「人と経営の本質を貫く軍師力」を吸収し、鳥取初の軍師®認定(1級)を取得した。

そして、河上は堅実に準備を進めた上で独立を果たした。「軍師アカデミー」の期間中に模索し続けた新しいキャリアの扉を開け、今も模索を続けながら、自力で未来を切り開いている。学びにも終わりはなく、仕事と学びを一体として積み重ねる毎日だ。軍師アカデミーで出会った「キャリアカウンセリング」についても勉強を進め、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の資格も習得した。

もちろん、「家庭人」としての役割は全力で果たしている。毎朝、子どもへの弁当も作りつづけているという。河上にとって「おもてなし」の原点は、その弁当作りにあるのかもしれない。

「あっという間に過ぎ去った数年間。すべての出会い、家族1人ひとりに感謝しています。家族の理解と支え、仕事仲間の応援があったからこそ、自分の生きる世界を広く、豊かなものにしていくことができています。言葉では表せないほどの価値を周囲からいただいています。だから、私も全力で周囲に価値あるものをお届けしたい。まずは、この山陰の地に私が学んだ軍師力を届け、広げたい。そのためにまだまだ精進し、頑張ります」
山陰初の軍師でもある河上美夏。彼女は、仕事人として、家庭人として、何層にも重なるキャリア(人生)の虹を描き始めている。

河上 美夏(かわかみ みか)
【一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級】

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〒680-0862 鳥取県鳥取市雲山572
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