軍師ピックアップ 
DOORS PRODUCE 代表
中山 美佐子 【一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級】

コミュニケーションを鍵として扉を開ける軍師 02

他人への事業承継の現場に寄り添う

中山は、普段は、大学や企業で、コミュニケーションやCS(顧客満足)、キャリアデザインの講師をしている。しかし、彼女が単にスキルアップを教える『インストラクター』だと思っていると、良い意味でそのイメージを覆される。彼女は、講師である以前に、問題解決提案型の『コンサルタント』と呼ばれている。

「マナー研修をお願いできないだろうか」

中山は旧知の人物からの縁で研修依頼を引き受けた。研修対象は大手メーカーの協力会社であり、オーナー企業だった。依頼してきたのは、その会社の同族外で役員を務める副社長だ。現社長は2代目で70歳目前、3代目候補の息子はその会社で働いてはいるもののまだ若くておとなしいタイプ。間をつなぐためにも、3代目にはその副社長が就くのだろうということは、容易に理解できた。

月に一度、1時間の研修を3~4カ月、という依頼だったのだが、いざ研修を始めてみて中山は驚いた。研修などは初めてという職人肌の20名あまりの受講姿勢は経験豊富な中山の想像を超えるものだった。汚れた手のままで、ぞろぞろと挨拶もなく入室。椅子に座ったら、背もたれに全体重を乗せふんぞり返るという姿勢。質問をすると「わかりまっせぇん」とふざけ数人が笑う。とにかく反抗的な態度だった。

実は、その状態には理由があった。その会社の3代目候補はもう一人存在していたのだ。社長の親族で現場の責任者だった専務。古株の職人たちはその「専務派」だったのだ。ところが、受注元から新しく副社長がいきなりやってきて、専務が退職した。彼らは、副社長を追い出して、専務の復活を考えていたらしい。中山は、その副社長が始めた研修の講師だ。社命なので一応全員参加するのだが、あからさまに反抗的な態度を取っていたわけだ。事実、古株の職人が若手に対して「研修やら言っているが、副社長の言うことも、講師の言うことも無視しろ」と言っていたことも後日判明した。

「一般常識をウチの社員に教えてやってほしい」

現社長は、職人としては良い腕を持っているのに社交的なスキルが不足する社員たちを、外でも通用するように教育してほしいと中山に言った。そして第一回目の研修から、社長自ら参加し社員たちと一緒に並んで受講した。自ら挙手して発表し、一番大きな声ではじめと終わりの挨拶をした。そして第一回目の研修終了後こう言った「先生、あせらないでください。ゆぅ~っくりやってください。うちの社員は急には変われないです。時間を掛けて、少しずつ変えてやってください」

親族の専務ではなく、副社長を後継者と決断した社長の本気度を感じとった中山は決心した。この会社を救うと。今のところ、1年以上先までの受注はあり、損益もプラスだというこの会社だが、メーカーと資本関係があるわけでもなく、将来的に取引が継続する保証はない。しかもメーカーからの受注が100%のこの会社には営業社員がいない。その状態が孕む危険性を踏まえ、中山は研修の目標レベルを変更し、社員に伝えた。

「外部から受注を取ることができるコミュニケーションレベルを目指しましょう」
その思いをこめ、目標を伝えて1年。社員たちは自ら挨拶をするようになっていた。反抗的な態度だった社員たちも、月に1時間とはいえ、知ること、出来るようになっていくことを楽しめるようになっていた。会社は良い意味で変わってきた。

もちろん、それでも頑なに反抗的な態度を変えない社員も存在した。「先生、いつまで来るんでっか?」「あははは、ずっと来ますよ~。来月も楽しみにしていてくださいね」しかし、中山は挫けず、数々の打ち手を繰り出した。厳しいい局面においても、社長、副社長を支え、事業承継を側面からサポートした。そして、予定通りの「副社長への事業承継」「さらに、その次の後継者の育成」「後継者のチームづくり」をも支援し、同社の新しい成長ステップへの歩みを軍師として支えたのだ。

中山は、4年間、毎月1回1時間は全社員参加の研修をし、研修後は、先代社長と後継者の相談に乗った。社員にも弱音を吐けず、事業を知らない知人友人に話しても理解してもらえない彼にとって、状況を理解した上で話を聴いてくれる中山の存在は貴重だった。

4年間の研修で、社員たちは一緒に歌を歌ったり踊ったり、人前で自分の考えをプレゼンテーションできるようになり、目標設定の仕方、目標達成のための相互貢献の仕組みを体得し、チームとして外から受注を取ってくるまでになった。

中山は、依頼された内容のみに留まらず、その元となっている問題を解決するために、一歩も二歩も踏み込むコンサルティングを貫き通したのだ。

後継者・後継経営者の軍師として

中山の強みは、大勢の人数を前に講演することも、数十名の研修をすることも、個別の相談にのることもできるところにある。講師業の長年の経験と、ビジネスコーチやチームコーチ、キャリアカウンセラーといった個別相談の経験も豊富。さらに、数社の大手企業で働いた経験も持つ。研修クライアント企業も、大手企業から、そうした企業の協力会社、その経営者会や青年会まで幅広い。

例えば、大手企業を受注元にしている場合、景気には左右されるものの、受注をあまり心配しなくてもよいという協力会社ならではのメリットがある半面、デメリットもある。仕事の流れの「川上」の考え方を知りながら支援できるのも中山の強みだ。

協力会社とはいえ、事業内容も事業規模も様々、財務面が潤っている会社ばかりではなく、問題点も様々だ。しかし、コミュニケーションについて悩んでいる後継者、経営者が多いことは共通している。そこで「扉」を開けたとき、全ての課題と可能性が見えてくる。コミュニケーションを鍵として扉を開け、本質に踏み込み、問題の掘り起こしをしながら支援するのが中山らしさなのだろう。クライアントがどんな規模であっても、「御社がいないとウチはやっていけない、御社は大事な協力会社です」と取引先から言われるような存在価値の高い会社でありたい、と彼女は話す。

「相談や依頼をいただくたびに、勉強になります。一社として同じ悩みはありません。後継者はひとりひとり違うことを悩んでいらっしゃいます。そんな後継者や後継経営者たちの何か力になれることがあったら、本当にうれしいです。とにかく一言相談してみてください」

いつも楽しげで話好きに見える彼女だが、自分自身は相談下手だという。なかなか弱音を吐けないし、勝気に見せている分、ヒトに甘えるのも下手。なんとかなるだろうと楽天的な半面、なんともならないときでさえヒトに頼ることができない。実はコミュニケーションも苦手だという。苦手だからこそ勉強したのだとか。それでも本当に困っていることや悩んでいることの一番言いたいことは言えないのだそうだ。そんな彼女だからこそ、相談者の表の依頼内容から一歩二歩踏み込んで、本当に解決したかった問題の核の部分へと辿りついて行けるのかもしれない。コミュニケーションを鍵として扉を開ける軍師として、中山は今日もどこかで新しい風を巻き起こしているだろう。

中山 美佐子(なかやま みさこ)

一般社団法人軍師アカデミー認定 軍師®1級
DOORS PRODUCE 代表
1級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格)、CDA、PHP研究所認定チームコーチ、DISCインストラクター、米国NLPマスタープラクティショナー、LABプロファイル®認定トレーナー、日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター

「『人・組織』の視点から企業の可能性の扉を開けていく軍師。対話と目標共有によるリーダーシップ力&組織チーム力アップについては、互いに理解・貢献し合う中での目標達成と、新しく価値を生み出すチーム構築の力強さと有効性を伝える、「良い会社づくり」のサポーター。
楽しさと、論理性・実践性の両立=『笑いと納得』のある支援スタイルは、「いつのまにか変化が起こる」と、各方面で好評を得ている。2006年4月から関西国際大学非常勤講師」
ご相談・ご連絡はEメールにて E-mail : doors-p@mh1.117.ne.jp

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