多くの中小企業が厳しい環境下で悪戦苦闘する時代。債務過多に陥り、積み重ねてきた価値ある事業の明日が揺らぎ、そこに根差す多くの人々の幸不幸が翻弄される時代。その中で価値あるものを未来へとつなぐため、絡み合う利害関係の整理と経営そのものの復活を図る経営支援領域がある。
その領域こそが『再生』。コロナ禍で翻弄されたこともあり、今、『再生』を図らんとする企業は枚挙にいとまがない。中小企業診断士であり、経営コンサルタントである廣田眞吾氏(軍師アカデミー第9期修了)はまさにその『再生』分野で卓越した実績を積み重ねてきた一人だ。これまでにかかわった再生案件は実に50件を超えている。
廣田氏が『再生』と出会ったのは約15年前。当時、既に小型ロボットの企画開発ベンチャーとして独立を果たしていた廣田氏だったが、経営の学びとして中小企業診断士の資格を取得した。ちょうど巷のロボットブームが停滞期に入ったことも感じ取り、廣田氏は思い切って事業の軸足を経営支援領域に移行した。そのスタートを切るべく、門を叩いたのが偶然にも『再生』支援のコンサルティングファームだったという。
その出会いは偶然だったのか、それとも必然だったのか。廣田氏はどっぷりと『再生』の世界に入り、その分野で頭角を現すことになった。
『再生』の領域は奥深く、支援者(コンサルタント)自身の負担も決して軽くない。諦めたら楽になるかもしれないと思ってしまう瞬間もある。厳しい局面の連続で、経営者とともに支援者自らが心身を弱らせ、病んでしまうことも珍しくない。また、世の中には『再生』を名乗りながらも、まだ立ち直れるのに、実際には単なる債権・債務整理、破綻手続きへと安易に流れるだけの専門家も多い。
廣田氏はそんな自称『再生専門家』とは一線を画す。とことん考え、知恵を絞り、現場で苦しむ人たちとその時々に応じた適切な距離感・緊張感を保ちながら、『再生専門家』としての役割を果たしてきた。時には当該企業の役員として執務にあたり、出来うる最善の着地点に共に走りながら誘導したこともある。数少ない本物の『再生専門家』として自らを磨き続けたのが廣田氏だ。
廣田氏は2017年の軍師アカデミー講座(第9期)修了生だ。当時の廣田氏は、『再生』を本質的にとらえた結果として、多くの再生案件における大きな課題の一つである『承継』の課題にアプローチする力を欲していた。
実は、『再生』同様に、『承継』も本質的な支援をできる専門家が少ない領域だ。『承継セミナー』と銘打ちながら、その中身は株式や税制の話に終始し、価値ある経営をいかにして次世代につなぐのか?いかにして次なる経営者が自らの経営を実現させるのか?という問題の本質を無視したものも少なくない。
『再生』と『承継』は切り離せない。『再生』のスキームには『承継』の道筋が不可欠になることが多いと実感していた廣田氏にとって、本質的な『事業承継』を愚直に追究していた軍師アカデミーの学びはジャストフィットするものだった。
軍師アカデミーでの学びを自らに吸収した廣田氏は、『再生』の仕事を更に進化させる挑戦を開始した。
『再生』支援の専門家が背負うことになる負担は決して軽くない。求められる力も多岐に渡る。一つの企業を一人のコンサルタントだけで支える負担はとても大きい。廣田氏自身は尋常ではない粘りと努力によってその課題を克服してきたが、これから続く後進の人たち、これから新たにこの領域に入ってくる人たちが同じ難しさに直面する業界であって良いのだろうか?自分一人の頑張りにも限界があるではないか。廣田氏はその壁を超えることを決心した。
辿り着いた解決策は、個人の力ではなくチームの力で『再生』に取り組むこと。それを可能とする基盤を構築すること。そのためには、多様な専門家がつながるネットワーク、しかも単なる寄せ集めでは無くて能力や想いを共有できる育成機能つきのネットワークが必要だと廣田氏は考えた。さらに、チームコンサルティングを支えるツールとしてのインフラも調えなければ、多忙な専門家がそれぞれの個人能力をチームとして発揮することもできないだろうと考えた。
廣田氏はその具現化に向けて荒波の中で船を進めている。実質的に廣田氏が立ち上げ、率いるBiz.Pro(一般社団法人 経営継続事業推進機構)がそのための船に相当する。強い船をつくり、船を動かす仲間を集め、チームで中小企業の『再生』、さらには(本人曰く、大風呂敷を広げるならば)日本の『再生』を目指して出航した。
もちろん、うまくいかないことは山ほどある。有効だろうと思って取り組んだものが崩れていくときもある。しかし、そんなときこそ、自らが培ってきた『再生』の経験値を活かし、時には大胆に、時には繊細に、常に粘り強く未来に向けて自分や周囲の『再生』を図りながら船を進めている。時には港に立ち寄り、人や物資を調達し、何度でも出航する。決してあきらめず、ひとつひとつ積み上げていく。そのプロセスは、『再生専門家』でもある廣田氏の真骨頂でもあるのだろう。
楽をしたい人が選ぶ道ではないかもしれない。しかし、あえて茨の道を進むかのごとく、難題と向き合い、それを越えていくからこそ見えてくる景色を楽しむ廣田氏。その歩みを通して、価値あるものが生まれ続けていることも事実。廣田氏にとってワクワクする道のりはさらに未来へとつながっている。
*廣田氏が語ってくれたコメントについては、このあとに続くInteviewをご覧ください。