熊本県八代市に「裁判所に行くことが嫌い」と言ってはばからない弁護士がいる。西田幸広氏、50歳。弁護士法人Si-Lawを率いる西田氏は軍師アカデミー2015(第7期)修了の軍師だ。今、西田氏は新事業『この街の事業承継』を立ち上げ、後継者不在で事業継続が困難な企業を新たな担い手に橋渡しする動きを進めている。
事業が黒字であるにもかかわらず、後継者不在ゆえに廃業に追い込まれる事業者が年々増加している。黒字会社の約6割が後継者不在を理由に消滅してしまうかもしれない。その実態を目の当たりにした西田氏は、弁護士であり軍師でもある独自の知見を活かし、後継者不在企業を第三者に承継させ、その価値を未来へとつなぐサービスを開始した。2018年には別法人としてTORUTE株式会社を設立。失敗も伴う試行錯誤を繰り返しながら、粘り強くその事業を軌道に乗せてきた。
西田氏が扱うのは、主に中小零細企業のM&A案件だ。M&A仲介を専門に扱う事業者は少なくないが、実はその殆どが小規模案件を眼中にさえ入れていないと言われている。事業効率を考えた時、規模が小さいと得られるリターンが少なくなるからだ。そのため、小規模案件についてはニーズがあっても塩漬けされてしまうのだ。
しかし、この社会を支える事業者の大半は中小零細企業に他ならない。多くの大企業も中小零細企業に支えられている。社会の価値の源泉は中小零細企業の中に眠っている。この不健全な状態を何とかしたい。いや、この状態は自分にとってのチャンスではないか?弁護士の自分ならばなんとかできるのではないか?後継者不在の中小零細企業をM&Aによって未来につなぐこと。西田氏はそれを新たなビジネステーマの中核に位置付けた。
この気づきと決断の前提には、西田氏が『事業承継』に関心を持ち、軍師アカデミー講座でその本質を学んでいたという事実が存在する。西田氏は弁護士だが、裁判での争いを好まない。できる限り争いを予防するために尽力したいという。そんな西田氏にとって、『事業承継』は争いの予防が可能な領域だった。西田氏は軍師アカデミーで『事業承継の本質』を学び、その視点や問題意識を共有できる軍師の仲間たちとつながり、講座終了後に新たな活動を模索していたのだ。
その中で見出したテーマが『この街の事業承継』だった。
弁護士である自分ならば、軍師アカデミーが唱える「価値あるものを次世代につなぐ」を実現できる。M&Aスキームを活用し、しかも大手がやらない案件を支えることができる。補完し合えるだけのスキルを持った軍師の仲間たちも周囲には豊富に存在する。
そこに着眼してからの西田氏の行動は大胆かつスピーディなものだ。新法人を設立し、大胆に費用も投下し、試行錯誤しながら足場を固めていった。地域の飲食店、ゴルフ場・・・西田氏の読み通り、後継者不在で諦めようとしていた事業者は少なくなく、自身のかかわりが多くの人を幸せに導き、そこに笑顔が生まれることを体感した。
今年、西田氏は50歳を迎えた。弁護士としてさまざまな案件を扱っているが、今からの仕事は「やりたいこと」にシフトしていきたいという。「やりたいこと」とは、裁判で争うよりも、争いや不幸を未然に防ぐ『予防』の領域。『この街の事業承継』はまさにその中核に位置付けられる事業に他ならない。M&Aはもちろん、家族信託等、法務の専門家である自分ならではの打ち手は豊富に身につけており、二の矢、三の矢も準備できている。
価値あるものを守り、未来へとつなぐ存在へ。回避可能な争いや不幸を発生前に解消させる弁護士。西田氏ならではの弁護士像、軍師像がそこに存在する。
【関連ホームページ】
この街の事業承継 https://kono-machi.jp/
*西田氏が語ってくれたコメントについては、このあとに続くInteviewをご覧ください。